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大阪高等裁判所 昭和43年(行ス)6号 決定 1968年10月21日

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりであり、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

抗告理由第一点について

道路交通法一一条一項と同法七七条とは両立し得ない規定ということはできず、前者の適用があるからといつて、後者の適用を当然免れるものではないと解すべきであるから、所論は理由がない。

抗告理由第二点及び第三点について

当裁判所も憲法により保障された表現の自由の理念の重要性についてはもとより異論を挿むものではないが、一方本件交差点における交通状況の維持の利益も亦極めて重大な問題である。したがつて現下の社会情勢上前者の理念の実現には何らの制約をも設けることを許さないものと解することはできないのであつて、原決定が諸般の状況より公共の福祉に基づく若干の制約を許容すべきものとした判断はやむを得ないところである。

本件事案の性質上、十分の時間的余裕をもつて判断できないことは誠に遺憾であるが、当裁判所が別紙抗告理由及び抗告代理人の口頭による詳細な補充陳述を十分参酌しつつ、できる限り本件記録を精査してみても、いまだ原決定の判断を取消すに足るほどの事実誤認をうかがうことはできない。

以上の次第であるから本件抗告は理由なきものと認め、民訴法八九条を適用して主文のように決定する。(沢井種雄 知識融治 田坂友男)

抗告の趣旨

一 原決定を取消す。

一 抗告人の許可申請にかかる昭和四三年一〇月二一日実施の反戦・反安保・沖繩奪還一〇・二一国際共同行動デモについて、相手方が昭和四三年一〇月一九日付でした条件付許可処分の許可条件のうち申請のあつた集団示威行進の解散地点「中郵前交差点〜大阪駅前南西角路上(解散)』となる部分を『中郵前交差点西側の新阪神ビル西北角路上』に変更するとの条件の効力はこれを停止する。

一 申立費用は原審及び抗告審とも相手方の負担とする。

との決定を求める。

時抗告申立理由の補充書

一、原決定は抗告人の主張した点について、判断をしていない。すなわち抗告人が原審申立理由第八項に於て、主張した道路交通法第七七条は本件の如き集団示威行進を対象とすることができないものであつて同条は道路本来の用法である通行についてではなく、それ以外の道路工事やロケーション等の道路本来の用法以外の道路使用についてのみ適用されるべきで道路交通法の全体系をみれば、この事は明らかである。

同法が第一章の総則につづいて、第二章、第三章で道路本来の用法に従つた通行について、規定し、五章でこれとは全く意味の異なる道路本来の用法以外の道路使用について規定している事は、この事を裏づけるものである。

従つて、大阪府道交規則第一五条三号が集団行進が許可を要すると定めているのは、道交法第七七条一項四号の範囲を逸脱した無効の規則であるという点について、御庁の十分なる審理に希待する。

二、原決定は右の点を看過して、相手方の作成してきわめ形式的、分量的、系数による交通量をのみただちに取り上げようとした誤りがあるのであるが、仮に原決定のようにただちに交通量等について考察しても、それは実質的・本質的な交通量等と本件デモ行進の関係を慎重に考える事なく、事実誤認をおかしたそしりをまぬがれない。

更に原決定は右のようなはやまつた事実誤認をする事にのみこだわつて、表現の自由という憲法の上で最も重視さるべき基本的人権がはたして、保持されるであるか否かという重大な点を考慮していなかつた事はいかんな事といわねばならない。

本件許可条件によつて、失なう抗告人(多数のデモ参加者)の不利益は、けだし、本件許可条件によつて得られるであろう、本件交差点の交通状況の維持という利益はあまりにも権衡を失していると信じる。

三、原決定は本デモ行進の横断時刻それに要する所要時問を十分審理したものとはいえない。相手方の疏明はいずれも本件デモの横断予定時問を前提としてなされたものでないことは、これらの疏明自体をみれば歴然としているのではなかろうか。

又原決定にいう大阪駅周辺の乗降客は一日二、四〇〇、〇〇〇にのぼるという点をあげているが、仮にこの数字が正しいとしても、本件デモとこの数字の関連をみるとき、このような大きな数字は判断の基準となるものでなく、これらの数字も本件デモとの関係で実質的認定をするとすれば、全く異つた認定になるという事も明らかであろう。

本件デモの時問帯を真面目に考えるならば本件道路における一般交通が著るしく阻害されるというような納得できない認定はなされうべくもない。

これらの事は原審に於て述べた抗告人の各陳述並に相手方の提出した疏明によつて、万全の御審理を願えば明らかになると信じるので本抗告をする次第である。 以上

当事者の表示

抗告人 日本社会主義青年同盟大阪地区本部

右代表者 西村祐紘

右代理人弁護士 岡田義雄

同 松本健男

相手方 大阪府曾根崎警察署長

右指定代理人 広木重喜

ほか一〇名

右選任代理人弁護士 道工隆三

ほか三名

参考書類<省略>

(1) 申立人の集団示威行進許可申請書

(2) 別紙第一――公安委員会の許可条件

(3) 別紙第二――警察署長の許可条件

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